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安保法案の成立

2015-09-25 メールマガジン「志は高く、熱く燃える」より

安保法案が成立した。ほんとによかったと胸を撫で下ろしている。もしこれが成立しなかったらどうなるのか。我が国は国を守るという国民の意志が弱いと判断され、中国や韓国の日本侮蔑運動が一層加速することになったであろう。日本人に対する嫌がらせの類が頻繁に起きることになる。外交交渉で日本の言い分に耳を傾けてくれる国もない。そういう意味で今回の安保法案の成立は、日本が変わり始めたということを世界に示す大きな一歩であると判断している。中韓などの我が国に対する対応も少しは抑制が効いてくるかもしれない。困難な中でも初心を貫いて法案を成立させた安倍総理の頑張りに拍手を送りたい。安倍総理は歴史に残ることをやってくれたと思う。一つだけ残念なことは尖閣を守る領域警備の法律が今回は見送られたということである。
 
さて今の世界で自分の国を守る法律が整備されていない国は日本だけである。今回の安保法案ですべてが解決されたわけではないが、自衛隊も諸外国の軍同様、国際法で動くという方向に一歩近づくことになったのである。世界の軍は国際法で動く。国際法とは何か。明文化された条約などと慣習法の集合体である。軍の行動に関しては禁止事項が決まっている。世界の軍は禁止規定(ネガティブリスト)で動く。禁止事項以外は何でも出来る。これに対し日本の自衛隊だけが国際法で動くことが出来ない。自衛隊が行動するためには国内法上根拠法令を必要とする。自衛隊は決められたことしか出来ない。自衛隊は根拠規定(ポジティブリスト)で動く。これは日本政府が自衛隊の行動を制約しているからである。
 
自衛隊が行動するためには、イラク特措法やテロ対策特措法が必要であった。イラク特措法がなければ陸自、空自をイラクなどに派遣することは出来ない。テロ対策特措法がなければ、海上自衛隊をインド洋に派遣して外国艦艇に給油することは出来ない。しかしこのような法律を必要とするのは世界で日本だけなのである。これまでは何か事態が生じてから法律が作られるので適時に事態に対処することが出来なかった。しかも派遣された自衛隊は法律で決められたこと以外は実施できない。インド洋の海自艦艇は、目の前で海賊に襲われている商船を見てもこれを助けることは出来ない。それは違法行為になるのである。他の国の艦艇であれば直ちに救出行動を開始するであろう。
 
また集団的自衛権もこれまで行使できないとされてきた。一緒に作戦行動をしている友軍に対し、「俺がやられたときは助けてくれ、でもお前がやられたときには俺は助けられないから逃げる」という状況下で自衛隊は派遣されてきたのである。こんな非道徳的な行動をする自衛隊に対し諸外国の軍が信頼を置いてくれるわけがない。自衛官は非常に気後れしながら任務についていたのである。
 
今回の安保法案でこれらの問題も解決されることになった。何も我が国だけが特別なことをしようとしているわけではない。出来るだけ自衛隊も諸外国の軍と同じように行動できるようにしようとしているだけなのである。これに対し戦争法案だとか言って野党やマスコミが大キャンペーンを張った。多くの国民がこれに騙されて安保法案反対デモを繰り返した。しかし日本国民も戦後の自虐史観から少しずつ解き放たれているようだ。法案成立後の安倍内閣の支持率はさほど下がっていないからだ。
 
安保法案は戦争法案ではない。
戦争抑止法案なのである。
 
戦争が出来ないと戦争に巻き込まれる確率は高くなる。軍事力を整えて、来るなら戦うぞと構える国に対し戦争を仕掛ける国は少ない。プロレスラーに飛び掛る馬鹿はいないということである。
 
自衛官のリスクが高まると民主党が心配してくれた。自衛隊の任務が拡大すれば自衛官のリスクが高まるのは当然のことだ。しかし、 自衛官がリスクを引き受けてくれるから、他方では国民のリスクが減少するのである。自衛官という職業はリスクを引き受けることが前提である。自衛官は身の危険を顧みず任務遂行に当たるという宣誓をして仕事についている。しかし駆けつけ警護などの場合、武器が使えるようになるので自衛官のリスクも減少する場合もある。本法案によって一概に自衛官のリスクが高まるとも言えないのだ。
 
今回民主党の岡田代表が安保法案廃案のためにあらゆる行動を取ると言っていた。この人は今の我が国の安全保障体制についての知識があるのだろうかと思ってしまう。国を守れない現状を放置せよといっているに等しい。全く無責任である。また岡田氏はもともと話せば分かる、話し合いですべてが解決できるという考え方の持ち主だ。しかし国会の中でさえ話し合いで解決できずに委員長席を取り囲んだり、暴力沙汰を引き起こしたり、正にあらゆる行動を取った。岡田氏のように話し合っても分からない人は世界に山ほどいる。中国や韓国を見ていればよく分かるではないか。だからこそ国を守る安保法制が必要なのだ。岡田氏は安保法案に反対することによって、自ら安保法制が必要だという事を証明してくれた。
 
更に憲法違反という意見も多かった。しかし憲法は法律との整合性以前に 国民生活との整合性が問題にされなければいけない。国が外敵の侵略を受けても国民を守れないような状態が放置されていいわけがない。そのとき憲法がそれを妨げるのであれば憲法が速やかに改正されなければならない。しかし我が国の現状で速やかな憲法改正が難しければ、憲法解釈を変更するというのは極めて合理的な考え方だと思う。
 
「憲法を守って国亡ぶ」では本末転倒である。
 
 
 
 

防衛装備品の調達に思う

2015-08-10 Amebaブログ「志は高く、熱く燃える」より

 
 自衛隊の主要兵器の大部分はアメリカ製である。国際的に見てアメリカが高性能のものを造っており、また日米安保体制を尊重してわが国がアメリカ製のものを優先的に取得しているからである。しかしアメリカ製を優先し過ぎるがために兵器の値段が高すぎるのではないかと思うようなことが多い。これは戦闘機などの機種選定が行われ、機種が決まった後に条件交渉に入るという我が国の予算システムの問題もある。アメリカはどうせ日本はどんな条件でも買うことが分かっているから条件交渉に応じてくれない。かつてミサイル防衛システムの導入のときもそうであった。大臣が導入を約束しているからアメリカは自衛隊が条件や価格の交渉をしても突っぱねてくるだけである。そんなに条件が悪いのなら、そんなに価格が高いのなら導入をしない、あるいは別のものにするという兵器取得の決定権をそれを使う自衛隊に与えるべきである。安全保障会議で導入を決めておいて、細部交渉を自衛隊に実施させる手順は改める必要がある。
 
 グローバルホークやオスプレイなどが自衛隊にも入ってくる。これらも自衛隊の部隊よりは内部部局以上の政治レベルで導入が決定されている。グローバルホークは30時間以上も高高度偵察をするが、空中から情報のリアルタイム伝送が出来ない形で導入されるという。まる一日以上の情報を抱えて地上に降りてきたグローバルホークの情報を、着陸後分析しなければならない。分析は更にアメリカの会社に金を払って実施してもらうという。当然アメリカの会社は分析したすべての情報をそのまま日本に引き渡すことはないだろう。情報の世界はGIVE&TAKEが原則である。これでは自衛隊がアメリカのために情報収集しているようなものである。導入決定を自衛隊に任せればこのような形で導入されることはなかったであろう。
 
 オスプレイも17機の調達で3600億円といわれている。防衛関係費が伸びてもそれ以上にアメリカに支払うのでは国内防衛産業が力を付けることはできない。国内防衛産業が力を失っては、自衛隊の戦力発揮が一層アメリカに依存することになり、我が国の自立は遠のくことになる。国家の自立と軍の自立は同義語なのである。
 
 我が国では第二次安倍政権になって十年ぶりに防衛関係費の下落傾向に歯止めがかかり、上昇傾向に転じているが、新たに導入する兵器の価格上昇で自衛隊の戦力量を増大することが出来ない。中国の20年以上にわたる軍拡と東シナ海、南シナ海における軍事力による現状変更などを考慮すれば、我が国も早急に実質戦力強化に踏み出す必要がある。その際、最先端の兵器が必要数取得できる予算があればいいが、我が国の政治情勢ではそれは難しい。従って限られた防衛関係費を出来るだけ有効に使用しなければならない。その為に最高性能で高価なアメリカ製ばかりを追い求めるのではなく、兵器取得先の分散化を図るとともに兵器システムのハイ-ローミックスを進めてはどうかと思う。
 
 近代戦では兵器の性能差は、特に空や海の戦いでは決定的であり、あまりに差があり過ぎては兵器としての意味がない。極端な例であるが、空自の現在の主力戦闘機F15に対し、昔の零戦では戦うことは出来ない。しかしながら、ある程度の差で我慢できるものは一世代前や中古など創意工夫したらいい。そういう意味で、アメリカ同様実戦経験豊富なイスラエル製の兵器などを取得対象に加えたらいいと思う。



 兵器をアメリカからばかり買っていては価格も上昇するし、アメリカにコントロールされる度合いが高くなる。我が国が自立した国家に向かうためにも兵器調達先を分散化すべきだと思う。そして輸送機、給油機、救難機などは別に最新のものでなくとも十分要求を満たすことが出来るのではないか。中古品にすれば所用経費も抑えられる。分散化の対象国としてイスラエルに目を向けてはどうかと思う。東京オリンピックに向けた警備システムなどもイスラエル製は優れているようだ。
 
 
 


 


兵器国産化の推進

2015-07-05  amebaブログ「志は高く、熱く燃える」より

 近年の武器システムは、戦闘機にしろ、護衛艦にしろ、ミサイルシステムにしろ、システムが複雑である上ソフトウェアが多用されており、開発製造した国が継続的な技術支援をしてくれなければ動かない。自動車は外車を購入しても町工場で整備修理しながら動かすことが出来るが、戦闘機などはそう簡単には行かない。我が国はアメリカ製の武器を陸海空自衛隊が多数使っているが、これらはアメリカの会社が技術支援をしてくれなければ動かない。データリンクや暗号なども戦闘機などにそれらをセットするための受け皿があり、そこにはアメリカが作った暗号装置でなければセットできない。従って自衛隊はアメリカの友軍として行動する場合は世界でも有数の強い軍であるが、アメリカと袂を分かって行動しようとしたら、途端に戦力がダウンする。組織的な戦闘は不可能になってしまう。だから今の日本にとっては、日米関係は死活的に重要である。戦後70年になるが我が国は、今なおアメリカの協力がなければ国を守れない。

 しかし今後アメリカの相対的な国力低下などにより国際情勢はどう展開するのか分からない。オバマ大統領のように世界の警察官の役割を放棄する方向にアメリカが動かないという保障はない。そのときでも我が国は自ら我が国を守れるように今から準備を進めるべきである。本来独立国家は、自分の国は自分で守ることが基本である。そのために主要兵器の国産化を進めなければならない。兵器国産化を行えば、現在アメリカ製の戦闘機やミサイルシステムなどが逐次国産に置き換えられるであろう。そして兵器国産化を安い経費で行うために武器輸出解禁が必要なのである。

 平成26年4月1日我が国の武器輸出等について、それまでの武器輸出三原則に替えて「防衛装備移転三原則」が閣議決定された。従来は原則的に武器輸出を禁止し、例外的に武器輸出を認めるということであったが、これからは原則として武器輸出を認め、例外的に禁止するという原則に変更された。これは我が国が自分で自分の首を絞める政策の変更で、自衛隊や防衛 産業界にとっては大変喜ばしいことであろう。また我が日本国にとっても武器輸出は国家自立に向けての大きな一歩なのである。武器輸出は兵器国産化を推進し、アメリカの支援がなければ戦力発揮が出来ない現状が改善される。自衛隊が自立し、やがて日本の国が自立できる。

 我が国では今なお武器輸出をしない事はいいことだと思っている国民が多い。政治家や官僚、知識人などでも武器輸出は死の商人のやることだとか言って、これを否定する人が多いのが現実である。しかし国際政治を考えれば、武器輸出を禁止することは馬鹿なことである。武器輸出禁止は、わが国の外交交渉力を低下させるだけである。日本が開発製造した武器を外国に使わせておけば、我が国は当該国に対し外交上強い立場に立てるのである。現にいま我が国はアメリカ製の戦闘機などを使っているので、アメリカとの外交交渉では常に弱い立場である。アメリカと対等な立場に立つことはできない。

 主要兵器の国産化を推進しなければならない。主要兵器を造る能力があって同盟を組むことはいいが、能力がなければ相手国に支配されるだけである。これまで自衛隊は、予算削減などの影響もあり、国産を軽視して、とにかく安く調達できるものを買ってきたが、我が国の自立のためには必要な予算を確保し国産兵器の開発製造に努める必要があろう。

 武器のすべてを国産にすべきと言っているのではない。国産を推進し、外国から武器を買うときには相手国にも同じくらい日本製の武器を売って、対等な関係を目指すべきなのである。そうなって初めて自衛隊が自立した戦力発揮が出来る。自衛隊が自立しなければ我が国は自立できない。国家の自立とは軍の自立なのである。我が国の政治家にもこのことは是非認識してもらいたい。

 さて我が国はこれまで航空機の大部分はアメリカから輸入しているが、今回別な観点で心配なことが出てきた。我が国がアメリカから輸入した陸上自衛隊の練習ヘリコプターTH-480Bが平成20年から今年2月までに30機納入されている。このヘリを製造したのは米エンストロム・ヘリコプター・コーポレーションというという会社であるが、この会社が2013年12月に中国の重慶通用飛機工業有限公司に買収されている。この中国の会社は昨年3月からエンストロム480Bの本格生産体制に入ったと伝えられている。今後陸自に納入される維持部品や追加のヘリなどエンストロム社から供給されるものは中国製になる。自衛隊の主要な装備品が中国製と思っただけで自衛隊員の士気にも悪影響を与える可能性がある。今回は練習ヘリであり、あまり心配する必要はないかもしれないが、今後作戦機などが中国製になることがないよう注意しておかなければならない。更にヘリコプターやその部品などの納入に絡めて自衛隊からの情報収集、隊員に対する工作活動などがやり易くなるので警戒が必要である。